とうもろこしな日々
怪談サークル・とうもろこしの会のブログ
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最近の夢


最近、眠りの浅い時期にさしかかっている。

だいたい僕は、季節の変わり目とか3ヶ月周期とかで、眠りの浅い時期がくる。そうするとどうなるか。夢を沢山みる。人間は生物学的に、一晩で5.6こ夢を見るそうだ。ただ眠る中で忘れてしまい、覚えているのは目覚める直前に見た夢、その一つだけだという。その理屈が正しいのかどうか知らないが、最近、僕は、5.6こ夢を見てしまう。つまり、一晩で5.6回も目が覚めるからなのだ。その度に、見た夢を覚えているという次第。まあそれはそれで楽しいので、別に苦にはならない。
昨夜の夢では、喪黒福造にストーカーされてしまった。
「笑ゥせぇるすまん」の、アイツである。
これは怖かった。
喪黒ほどのクールガイが、我を見失うほどに感情的にテンパって、僕をつけ狙ってくるのだ。
僕は何をしてしまったんだろう。
おそらく、恋愛のもつれとか、そんな一般的なレベルではない。
そんな事では、喪黒を激怒させることなどないはずだ。
喪黒がテンパるほど怒ってるのが怖いという以上に、自分がそこまで喪黒を怒らせた理由が自分で分からないということが、さらに怖い。
「喪黒のやつ、お前を見たら刺すって言ってたよ。すげえ興奮してた。気をつけな」
友達に、そう忠告されたりもした。
そう言われても、どこに逃げれば良いのかが分からない。
その時の自分は、近所の高校の文化祭でメキシコ映画祭を開催する準備に追われていて、家を離れる訳にはいかなかったのだ。
結局、この夢は、僕の背後に喪黒が鼻息荒く立ったのに気付いた時点で終わる。
ひやあ、と叫んで目が覚めたからだ。
そんな夢をみちゃったんだよ。
怖すぎるだろ?
夢から覚めた後に、そう、中学時代の同級生に必死に説明してみた。
だが、彼は無表情でふんふん言うばかり。
どうやら残念なことに、彼は、この怖さを分かってくれないようだ。
確かに、中学の頃から、そういう話が合わないヤツだなとは思っていた。
それでも必死に説明する僕に、彼は
「まあ揚げたての串カツでも食べなよ」
と言って、数十個の生八ツ橋を一つに丸めてバレーボールっぽくした食べ物をくれた。
新食感だった。

と、いう夢をみた。

それから目が覚めて、しばらく、今現在いる僕のここは、夢なのかどうか、考えてしまった。

眠りの浅い時期になると、そういう面倒くささがある。
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新展開


ついに新章スタート!

という煽り文句が最も白々しく響くマンガといえば、釣りバカ日誌だろう。僕が生れる前から連載しているマンガだが「この展開すげー!やられた!」「新章突入だって!今週のオリジナルは買っとかなきゃ!」とか盛り上がってる人は、いまだ見たことが無い。
思うのだが、このマンガ。これから10年全く読まないで、10年後にまた読むのを再開したとしても、すごくスムーズに話が繋がると思う。違和感全く無しだと思う。前回までの、なんか辞職しようとしてるオジさん社員を慰留させようとする心底どうでもいい話が終って、今週からまた佐々木さんの娘が彼氏を家に連れてくるとかいう心底どうでもいい話が始まった。終わりなき日常。平坦な戦場で僕らが生き延びることに関しては、岡崎京子よりもこっちが上だとも言える。
まあ世間は広いから、本当に夢中になって釣りバカを読んでる人だっているかもしれない。次の展開をハラハラドキドキで待ちかねたり、徹夜で人物相関図を作ったり、同人誌を発表したり(秋山攻めの多胡受け「ここがいいんでスラ!」)。
ありえないとは言い切れない。
30年近く、ハマちゃん達を追いかけてきた釣りバカ信者。
いないとは言い切れない。
だが、今週のビッグコミックオリジナル。
今回、熱烈な釣りバカ読者に対して、ひどい裏切りともいえる展開があったのだ。

(以下、重大なネタバレを含みます)













(熱烈な釣りバカ信者単行本派は、ここから先は読まないで下さい)


上にも書いたが、今回、佐々木さんの娘のユキさんが、彼氏を連れてきた。不勉強な僕は、サーさんに娘がいたことすら知らなかったし、登場シーンも記憶にないのだが、それはまあいい。マニアには言わずもがなの周知の人物なのだろう。
さて、今週はさすがに新章らしく、サーさんが奥さんから「娘が彼氏を連れてくる」と言われるのが話の冒頭。まあ、新展開といってもつつましやかな、まことに釣りバカらしいプロローグである。
しかし、だ。
そのコマの横に、さりげなく書かれた地の文。
その3行が、実に衝撃的だった。







「実は、読者諸兄にはお知らせしていませんでしたが、佐々木さんの長女ユキさんは、2002年に結婚したのですが、3年前に離婚していたのデス。」


ひでえ。

サーさんって、主人公のハマちゃんとスーさんの次にメインの人物じゃん。ていうか、もうほとんど主人公の一人と言っていいキャラじゃん。その娘が離婚したのに「実は、読者諸兄にはお知らせしていませんでしたが」で済ませるって。衝撃。こんなストーリー展開、初めてみた。昔、漫☆画太郎が展開の収拾がつかなくなって「第○話〜第●話までのストーリーは無かったことにして下さい」って言っちゃって、本当に無かったことにして話を続けたことがあったけど、あれクラスだろ。いや、画太郎の方はまだ大ネタとして機能してたけど、こっちはサラっと流そうとしてるからね。「離婚していたのデス」とかいって。デスってさあ。ま、そゆことで、みたいな。毎週会ってる親友と世間話してたら全く口調変えずに「あ、俺、自己破産したからヨロシク。ところでマナカナでいったら、マナ、カナ、どっち派?」って言われたようなもんだよ。そこはスルーさせちゃダメだろ!「でもマナ好きの人の方が、ブレが無いよね。マナカナというものに対して」知らねえよ。


追記

こんなギャグまで同じ回でたたみかけてきやがった。








超やられた。

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ラジオ


ラジオが好きになってから2週間たった。
ラジオの知識も増えた。
ずっと荒川競艇だと思っていたのが、実は荒川強啓だと分かったとか。
他にも気付いたことを、幾つか書く。


AMアンテナ。
今時のコンポってFMしか聞けないのな。僕がバイト先の会社から夜逃げ屋本舗っぽくパクってきたコンポも然り。
AM聞きたいなあと思って家電量販店でAMアンテナを捜し求めてみたら「置いてません」と店員にキッパリ言われた。「21世紀、普通の人は、ラジオを、聞きませんので」。まあそこまでヒドくは言われなかったけど、それに近いことは言われた。「ましてやAMって(笑)あ、そういえばアナタ、僕が中学生の時にいたAMリスナーのバタやんって子に雰囲気似てますよ(笑)私服はいっつもトレーナーを短パンにインしてましたよ、バタやん(笑)」みたいな。言ってないけど。店員一言も言ってないけど。でも目では。目ではそんな感じのこと語ってたよ。
じゃあAMアンテナって幾らだよ!金だろ?金出せばいいんだろ?って詰め寄ったら2000円だって。高。買うかそんなもん。だってAMだよ?バタやんみたいな貧乏人が聞くようなもんでしょ?それが2000円出せってアナタ。
といった訳で、今だにラジオはポッドキャストでしか聞いてない。
だから正確にはラジオは聞いてない。


辛酸なめ子。
辛酸なめ子って、よくラジオに出てくるんだけど、そこで気が付いた。
名前の中に敬称があるから敬称が付けにくい人がいます。
例えば、アウンサン・スーチーさんとアグネスチャンちゃん。
僕の知っている限りでは、その2人だけだった。
ところが辛酸なめ子は、ラジオだとよく「辛酸さん」と呼ばれている。
名前の中に敬称があるから敬称が付けにくい人が、僕の中で一人追加。


アイポッド。
ポッドキャストで落としたラジオ番組をアイポッドで聴いてるのだが、休日に20時間くらい聞き続けてると、頭の芯が冷える。


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スコーン


スコーンを買いに行った。
おつかいである。バイト先の社員から買ってくるように頼まれたのだ。紀伊国屋の中にカフェっぽい設備があり、そこで買うようにとのことだった。店の中に入ってウロウロ探してみると、カウンターのケースに「プレーンスコーン」「メープルスコーン」などという名札があった。しかしそれは名札だけで、ケースの中には現物が存在していない。店員に聞くと「売り切れました」とのこと。
僕は途方にくれた。
代わりに何か買っていけばいいのだろうが、その時の僕には何を買えばいいのか、全く分からなかった。なぜなら、スコーンというものがどういう物なのか、皆目見当もつかなかったからなのだ。あんパンが無かったらウグイスパンを代わりに買えば良いし、ウインナーパンが無ければピザっぽいパンを代わりに買えば良い。それは分かる。でも、スコーンの代わりに何を買えば良いのか?それは本当の謎である。僕が子供の頃、コイケヤのスコーンというお菓子があった。おぼろげな記憶の中で、スペイン舞踊の手拍子に合わせてスコーンスコーンコイケヤスコーンスコーンスコーンコイケヤスコーンとヒゲのオジさんが叫んでいたCMを憶えている。あれか?たぶん違う。だってパンじゃなくてお菓子だもん。一応、コーンとマヨネーズのパンも探してみたのだが、あのパンは本格指向なパンとされてないのだろうか、紀伊国屋には置いてなかった。そしてスコーンのコーンがとうもろこしのコーンという保証も、どこにもない。
どうしよう?どうすればいい?最悪なのは、何も買っていかないことだ。腹をすかして社員が死ぬ。死ななくても、怒った社員はガキの使いというレッテルを僕に貼る。もう、どうしよう?
店員に聞いてみた。
「すいません。こ…スコーンっぽいパンありますか?」
店員「スコーンっぽいものですか?」
「すいません、僕、スコーンがよく分からないんですけど、スコーンっぽいパンが欲しいんですが、そういうのあったら欲しいんです、へへ……」
この人は、なんで自分の食べたいパンがよく分からないのだろう、と店員は思った。と僕は思った。やけに目的がハッキリしてるくせに肝心のところが不明なのが、すごく気持ち悪い。スコーンっぽいのですか……と呟きながら店員はカウンターを行ったりきたりした。その時に気付いたのだが、店員の鼻の左サイドにホクロがあって、それが可愛かった。店員は、女だ。
結局、女の店員は僕に、ベーグルを買わせてくれた。
ベーグルなら知っている。ユダヤ人の食べ物だ。ユダヤ教ではカシュルートで決められたカーシェールでないもの、つまり蹄が分かれていなかったり反芻をしない四つ足の獣や、ヒレや鱗のない海や川・湖に住む生き物などは食べてはいけないが、ベーグルはよく食べる。それは知っている。
しかしバイト先に帰ったら、ベーグルとスコーンは違うんだよと社員に怒られたので、僕はまだ、スコーンというものが、よく分からない。


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ネイチャージモン


最近すごい悔しい思いをしてしまい。
何かというと「ネイチャージモン」という寺門ジモンのマンガを読んだら、面白いと思ってしまったことなのだ。普通にマン喫で声だして笑った。笑ってしまった。笑い終わった後、あれ?俺の笑いのレベルって……?と、ちょっと自問自責してしまった。まあ東京近郊の中流家庭で育った男子にありがちな「自分の笑いの鑑賞レベルはちょっと高めだろう症候群」の身としては、これで声だして笑っちゃうの俺?というショックもちょっとあったというか。ぶっちゃけ、自分は、こんなに笑いのレベルは低くない筈だと必死に自分自身に主張したというか。別に笑えたんなら笑えたってことで素直にいいじゃん。という風に済ますことも出来ず、嫌、違う、俺はもっとこう、なんていうか、モンティパイソンとかを笑いの基準値とするタイプだから?こういうのはちょっと……みたいに言いたい筈なんだからとかなんとか、もうシチ面倒くさい。ちなみに上の自問自責って寺門ジモンにかけてあり、東京近郊の中流家庭で育った男子自身が、じゃあ実際に自分で笑いを作るとレベル的にはこんなもんですよってことなんだけど。
で、まあ、すごい回りくどい言い方したが、ベタなもの見て素直に笑っちゃったよテヘ、という事。いや、このマンガはまあ、山登りと焼肉のウンチクをテンション高く描いただけの、アレといえば相当アレなマンガだし、C級クオリティ作品をサブカル的にうがった見方で面白がろうとしても出来にくいセンスの作品なんだけど、その上でもまあ。ちゃんと褒めてもいいと思うんだ。組み合わせの勝利だと思うんだ。ダチョウ倶楽部と「破壊王ノリタカ!」と「人間凶器カツオ!」と「霊長類最強伝説ゴリ夫」の作者を組み合わせた勝利だと思う。ベタとハイテンションとお約束を×2にして放り投げたらこうなりましたという、あまり無いタイプの感覚だと思うんだ。素直に編集的プロデュースが功を奏したと言えるマンガかと。
まあ、ここまで言っておいてなんだけど、ジモンが相当ムカっとくるマンガなんだけど、その上で楽しめれば。

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バッファロー


ともぐい看板。
久々にパンチのあるやつを、すき家にて発見。







いい笑顔。
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原宿


最近、原宿、よく行く。竹下通り、よく通る。
かなり行く。といっても若者っぽい店にしけこむ訳では無い。やむをえない事情でダイソー原宿店に入り浸っているだけだ。知ってる人は知ってるだろうがダイソーは竹下通りにあり、必然的にあの竹の子ロードを通らざるをえないのだが、なんかもう、疲れる。本当に疲れるんだよ、あの商店街。中学生時代、ひょっこりスカウトでもされないかと思って毎日曜日ウロウロと往復していた以来の久しぶりなのだが、大人になって通るとこんなに疲れる通りだったのか?とにかく、あの人通りの多さ。そして人種。いや、ゴスロリの人とかは、まだ別に大丈夫。あとケバい女子高生とかも。そこらへんは、元々そういう人たちがいるって知ってるので、そのつもりで気合を入れて行ける。でも、でもだよ。本当に意味が分からない人もけっこういるんだ。通りの端っこに、3m間隔で黒人が立ってるんだけど、あれ、なに? 時々バカそうな若者に超フランクに話しかけてるけど、あのアフリカ系の人達はなに?いつ行っても必ずいるんだけど?あと必ずいるといえば、韓国軍の軍服を着た人。絶対にいつも直立不動してる。あれなに?あと絶対に白いTシャツから乳首がこれでもかと浮きでてるオジさんが2.3人はいるんだけど?今日も、そんな人の群れの中をドキドキしながら縫って歩いており。まあドキドキの理由は他にもあって、ダイソーで100円の包丁を買って、ほぼ抜き身でうっすいビニール袋に入れてたからなんだけど。職質されたら確実にアウトだった。
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草いきれ

今日ね、バイト先のデスクがアマゾン。
アマゾンっぽいんだ。熱帯雨林な匂いがするんだ。なんでだろう?と考えてみたら2秒で答えがでた。ここんとこずっと、乏で電車賃を浮かせたいのと、何か妙なテンションの時期に入ってしまったのとで、家からバイト先まで歩いている訳ですよ。けっこうな距離をね。八王子の高尾の山出身の僕としては常識的なkm数だけど、普通に近郊都市で生まれ育った人だと……え?修行?みたいにヒカれる程度の距離なので、歩いてだけでもそれなりに汗もブワー出ると。なもんだからまず家をTシャツ着て出て、会社に着いた時点でトイレで新しいシャツに着替える。汗まみれTシャツは机の引き出しに入れる。バイト終わりに、またバッグに入れて持って帰る。ということが出来ればいいんだけど、ラストの「持って帰る」がなかなか難しくて出来ない。だってバッグに入れるのとかちょっと重くなってメンドくさいんだもん。バイトで疲れてるのにさ。なもんで、デスクの引き出しに梅雨時のレモンライムみたいなスメルのTシャツが溜まる溜まる。そして週末の休みを挟んだことが丁度よい醗酵期間となったのだろう。色んな成分のせいで内部の空気が膨張して、かなりカッチリした引き出しのごくわずかな隙間から、それらのフレーバーが漏れ出し始めている、と。そう、僕は推察しました。解決策としては「引き出しを開けてTシャツを取り出して持って帰る」なんだけど、メルトダウンしている内部を開放して、外気にさらし瞬間にどうなってしまうのか。それを想像すると恐ろしくて手がつけられないでいる。

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試練

山梨県は甲府市へと旅する。一泊二日。心霊ドキュメンタリーの撮影旅行だ。
こういうと、なんとなく優雅な感じもあるかもしれない。
「皆があくせく働いてる時に楽しそうですな。いいご身分ですな、この極楽トンボども」
とんでもない。
心霊ドキュメンタリーなどというものを撮ってる時点で極楽トンボなのは否定しないが、優雅では、ない。
うちらの映像を見た知り合いから「今度、どっか撮影する時に一緒に連れてってよ」みたいなことも言われることもあり、それはそれで嬉しいのだが、少し誤解されてることがあると思うので、この際ハッキリと言っておくと、正直、大変だよ。
大変なんだよ。
例えば今回、撮影がエラく押し押しになった。心霊ドキュメンタリーだから仕方ないのだが(心霊ドキュメンタリーは撮影が押し押しになるものだと、僕は人々に言い張っている。他に心霊ドキュメンタリーを撮ってるという人が周りにいないからか、みんな素直に信じてくれる)、その他にもスケジュールが押した理由がある。
甲府駅から数km先にある昇仙峡というところに行ったからだ。実をいうと、ここはあまり心霊とは関係ず、まあ一部では妙な噂もあるらしいが、ぶっちゃけ変な形の岩がたくさんあるだけの面白い渓谷に過ぎない。それでも撮影のスケジュールに組み込んだのは、つげ義春のマンガに出てきたから、行ってみたかっただけなのだ。それだけ。僕のワガママ。つげ氏と同じ場所で、「フクちゃん、泣くな」って同じセリフを行ってみたかっただけ。
それでまあ、行ったのだ。まあ、つまり、僕の満足のための観光?
それでかなり撮影が押し押しになった。
まあ、そこまではいい。
皆で車を降りて、豆腐岩だの熊岩だの、変な形の面白岩を堪能できたからだ。他の皆はあまりテンションが上がってないようだったが、内心、本当は楽しんでた筈である。だって、豆腐を切ったような岩とかあるんだぜ。そんなの見たら、一生の思い出になるよな。
しかし皆で岩を鑑賞していた、まさにその時、困ったことが起こった。
撮影に同行してもらっていたK君。
無理を言って手伝いで来てもらっていたのだが、そのK君が腹痛を起こしたのだ。
ウンコがしたいという。
しかし、ここは渓谷。トイレなどない。
「ちょっともう長い時間は我慢できない、車でトイレを探してくれ」
などと言い出すK君。
しかし、昇仙峡に来てしまったおかげで、ただでさえキツい撮影スケジュールはパンパンになっている。もう一刻の猶予もない。いや、それ以上に、僕は、わざわざ車を動かしてトイレを探すのが面倒くさかった。車に置いてあったティッシュ箱を片手に、僕はK君に言った。
「まあ、野グソでもしろよ。一生の思い出になるぜ?」
いや、それは嫌だとワガママを言い出すK。副会長までもが「ちょっとそれは、どうだろう」と二の足を踏んでいる。しかしここで時間をロスしたくはない。気は進まないが、仕方ない。
「もう撮影できる時間は残り少ないんだぞ!」
僕は意を決して、彼らを怒鳴りつけた。
「もうちょっと、スタッフとしての自覚を持て!」
そんな熱意が通じたのか、K君はしぶしぶながらも了承してくれた。川原まであぜ道を下り、折からの大雨で増水した河に恐る恐る近づく。K君は河にせり出した岩の端っこで用を足したようだ。けたたましい濁流の低音に混じって、ポチャリ、という音が聞こえたような気がした。
「いいなあ!大自然と一体になったんじゃないか!いいなあ!」
うつむいて戻ってきたK君が必要以上に恥ずかしがらないように、そう励ます僕。
そうして気を取り直した我々は、ようやく撮影のために車のエンジンをかけた。先ほどまで居た川原の上の道を出発し、5mほど先にある急カーブを曲った時。
それはあった。
「中間地点の休憩所」という看板のすぐ横に、公衆トイレが。
車内が、いっせいに沈黙した。
「……俺、ションベンしたいな」
この空気に耐えられなくなったのか、副会長が言った。
「あ、俺も」僕は車を広々とした駐車場に停め、トイレの建物に入った。
非常にキレイだった。チェックシートのようなものが貼ってあり、それを見ると、毎日の清掃を欠かしていないようだ。公衆便所につきものの、あのすえた匂いなどカケラもない。
用を足してスッキリした僕らが外に出ると、車の横でK君がタバコをふかしていた。
その時のK君の表情が凄く良かった。すごく良かった。ちょっとビデオで撮りたい位だった。僕がそう言うと、副会長は無表情でボソリと答えた。「心霊と、関係ないだろ」と。

これは、この過酷な撮影旅行のエピソードの中の、ほんの一部である。
心霊ドキュメンタリーというものの苛烈さが、分かっていただけただろうか。


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